SESは、IT業界での契約形態の1つのことです。
SESはSEと用語が似ているため混同している方もいらっしゃるかもしれませんが、この両者は全く異なります。
システム開発会社だと思って、就職してみたらSES会社だった場合なんてことも・・・
今回はそんなSESのメリット・デメリット、その他の契約形態との比較もふまえて紹介していきます。
この記事の目次
- 1 SESとは?SESは準委任契約で派遣に近い
- 2 SES事業のビジネスモデルをわかりやすく解説!
- 3 SES契約と派遣・請負は全くの別モノ!雇用形態をしっかりと理解しよう
- 4 SES契約と派遣の違い&メリットデメリット
- 5 SESと請負の違い&メリットデメリット
- 6 SESの主な仕事内容とは?具体に何をするのか
- 7 SESの年収は高い?安い?報酬額の目安を見てみる
- 8 SESは違法なのか?グレーゾーンな契約や違法になる場合の契約もあるので注意!
- 9 SES契約で気をつけるべきことは?必ずチェックすべきケース
- 10 SESがおすすめな人はどんな人材なのか?
- 11 SES案件はフリーランズエンジニアが多いのが特徴
- 12 SESになるには転職エージェントに相談がベスト!
- 13 SESとは?派遣と請負の違いまとめ
SESとは?SESは準委任契約で派遣に近い
SESは「システム・エンジニアリング・サービス(System Engineering Service)」の略称。
システム開発、運用保守における契約形態の一種といえます。
SES契約は多くのIT業界の現場で活用されています。
システムエンジニアリングサービス契約(SES契約)とは、システムエンジニアが行うシステム開発等に関する、委託契約の一種(委任・準委任契約等)で、システムエンジニアの能力を契約の対象とするものである。
出典:システムエンジニアリングサービス契約(SES契約)とは|ウィキペディア(Wikipedia)
システム開発の現場では常に人不足の状態なので、システム開発企業にエンジニアを派遣し、派遣先に常駐して開発の支援を行うことをSESと呼びます。
そのためSES事業を行っている会社は、実際のシステム開発を行いません。
SESは派遣会社に近い形態といえるでしょう。
このように書くと派遣や請負と同一だと思ってしまう方もいらっしゃるかもしれません。
確かに行っていることは似通っていますが、派遣・請負とは求められることが全く異なっています。
しかし、中には派遣・請負との違いについて、当事者同士が理解していないことも。
それにより法に定めた範囲外のことを行っている場合もあるため、どこまでが契約範囲なのか正しい知識をつけておくことをおすすめします。
SES事業のビジネスモデルをわかりやすく解説!
それでは具体的にどのようなビジネスモデルなのかについて見ていきましょう。
SES事業は、システム開発業務において、人が足りない現場に自社のSEを派遣することで報酬を得ています。
システム開発事業では顧客はシステム利用者となりますが、SES事業での顧客はシステム開発事業を行っている会社となるのです。
それではSESにおける流れを見ていきましょう。
- システム開発会社(クライアント)がSES会社に問い合わせる
- クライアントの要望にマッチする人材を派遣する
- クライアントは給与をSES会社に支払う
- SES会社は派遣した人員に給与を支払う
まずシステム開発会社(クライアント)は自社の事業における不足している人材についてSES会社に問い合わせを行います。
例えば、「Webシステム開発におけるRubyの技術者が10人欲しい」などです。
SES会社はクライアントからのオーダーに対し、最適な人員を集め、時には教育を行うことでクライアントの要望にマッチする人材を揃えます。
揃えた人材をクライアントに派遣し、クライアント企業の常駐エンジニアとして主にシステム開発を行っていきます。
クライアント企業は時間給など契約時に定められた報酬をSES会社に支払い、SES会社は派遣した人員に給与を支払います。
システム開発の現場は常に人材不足、状況が刻一刻と変わってくるため、昨日必要だった人材と今日必要な人材が異なることも。
そのような中でSESの考え方はマッチしているといえます。
そのため、多くのIT企業でこのSES契約を活用してシステム開発を行っているのです。
SES契約と派遣・請負は全くの別モノ!雇用形態をしっかりと理解しよう
ここまででSES契約の一般的な流れについて紹介しました。
SESと派遣はどちらもIT業界ではよく利用される雇用形態です。
しかし、ここまで読んだ方の中には「派遣と請負と一緒なのでは?」という疑問を持った方もいらっしゃるでしょう。
そこで、3者の違いを表にまとめてみました。
SES | 派遣 | 請負 | |
契約形態 | 準委任契約 | 派遣 | 請負 |
指揮命令権 | SES会社 | 派遣先 | 請負会社 |
提供するサービス | 労働力 | 労働力 | 成果物 |
仕事場所 | 顧客の会社 | 顧客の会社 | 請負の会社 |
SES契約と派遣の違い&メリットデメリット
雇用形態のひとつ。
労働者は派遣元の企業と雇用契約を結び、実際の業務は派遣先の企業で行う。
指揮命令権は派遣先の企業が持つ。引用:派遣とは|コトバンク
SES契約と派遣の違いですが、
現場に技術力を送り込むということで非常によく似た2つですが、その両者の違いは指揮命令権にあります。
- SES:指揮命令権は雇用主(SES会社)にある
- 派遣:指揮命令権はクライアント会社(派遣先)にある
指揮命令権は、派遣された人材への業務内容などの指示が含まれます。
そのため、SESの場合はクライアント会社が直接業務内容を指示することも、残業の依頼をすることもできません。
全てSES会社を通して依頼する必要あります。
派遣契約の場合、クライアント会社が直接業務内容や残業の指示を行うことができます。
また、SES、派遣共に成果物に対して責任を負うことはありません。
そのため、作業者が障害を発生したとしても、それはクライアント会社の責任であり、SES、派遣会社の責任はありません。
派遣と比較した場合のSESのメリット
派遣と比べたときのSESのメリットは、指揮命令権がSES会社にあるという点です。
IT業界ではしばしば高負荷な業務が問題となります。
派遣もSESも人手が足りていない現場に派遣されるため、無理を強いられたときに断ることができません。
しかし、SES契約の場合現場で直接指示できないため、無理に働かされるということがなくなります。
派遣と比較した場合のSESのデメリット
デメリットは、SES会社は派遣会社と違い派遣業の許可がなくても事業が可能となっています。
指揮命令権はSES会社にあり、場合によっては無理に働かされることも。
良くも悪くもSES会社次第というところがSES契約にはあります。
SESと請負の違い&メリットデメリット
請負(うけおい)とは、当事者の一方(請負人)が相手方に対し仕事の完成を約し、他方(注文者)がこの仕事の完成に対する報酬を支払うことを約することを内容とする契約。
日本の民法では典型契約の一種とされ(民法632条)、特に営業として行われる作業又は労務の請負は商行為となる(商法502条5号)。
SESと請負の違いは、責任範囲にあります。
- SES:成果物に対する責任がない
- 請負:成果物に対する責任がある
請負契約は「この製品(プログラム等)をいつまでに納品して欲しい」という契約で行われます。
業務の調整については請負元会社が行い、クライアント会社は指示することはできません。
その代わり成果物に対して契約を行っているため、成果物を納品できない場合は代金が支払われません。
また納品後にトラブルが発生した場合、最悪のケースでは賠償責任が生じてしまいます。
SESは労働力に対価が支払われる形態で、プロジェクト終了後トラブルが発生しても責任を問われることはありません。
派遣と比較した場合の請負のメリット
請負と比べたSESのメリットは、責任の範囲が狭いことが挙げられます。
例え、指定された期間に成果物が完成しなくても、成果物に致命的なミスがあったとしても、最初に取り決めた報酬が支払われます。
そのため安定した収益が見込めます。
派遣と比較した場合の請負のデメリット
デメリットは請負に比べて報酬額が低いことです。
責任の範囲が狭い分、請負に比べてSESは低い傾向にあります。
そのため、スキルがある人は請負契約で業務を行ったほうが良いでしょう。
SESの主な仕事内容とは?具体に何をするのか
SESで行われる業務は非常に幅広くあります。
大きく分けるとソフトウェア会社のオフィスに常駐して作業する業務と、ソフトウェア会社が契約している客先に常駐する業務に分けられます。
ソフトウェア会社に常駐する業務
システム開発における各工程を担当します。
- システムエンジニアとして各種設計業務を行う
- プログラマとしてプログラムコーディング
- 単体、結合テストを行う
などが業務として挙げられます。
必要なスキルは派遣先により異なりますが、JavaやC#などが求められるケースが多いです。
Web系のシステム開発会社の場合、Webデザイナーなどの業務も。
このように、ソフトウェア会社に常駐する業務は、一般的にシステム開発業務がメインとなります。
客先に常駐する業務
客先では主に客先に導入しているシステムのメンテナンス業務がメインとなっています。
ネットワークエンジニアとしてネットワークの運用保守、サーバエンジニアとしてサーバの運用保守などがあります。
また、導入システムに関する問い合わせ対応や、データのメンテナンスなども業務としてあり、非常に幅広い知識が求められます。
SESの年収は高い?安い?報酬額の目安を見てみる
SESの平均年収の、正式な統計情報はありません。
SESは雇用形態の一種であり、職種ではないからです。
SESの職種としてはシステムエンジニア、それも客先常駐SEに近いため、客先常駐SEの平均年収を見てみましょう。
年齢 | 平均年収 | 男性平均年収 | 女性平均年収 |
20代 | 395万円 | 393万円 | 399万円 |
30代 | 505万円 | 509万円 | 482万円 |
引用:システムエンジニアの年収|マイナビ
客先常駐SEの平均年収は、3年目〜7年目で年収320万円〜400万円程度です。
この数値は一般のシステムエンジニアの年収と比べると、やや低い水準でしょう。
成果物に対して責任を負わない点、依頼主がソフトウェア会社であることから、一般のシステムエンジニアよりは低くなってしまいます。
SESは違法なのか?グレーゾーンな契約や違法になる場合の契約もあるので注意!
IT業界で働いていると「SESは違法なのでは?」という噂を聞くことがあります。
結論から申し上げると、違法とは言えませんが、グレーな部分がある契約形態と言えるでしょう。
SES契約は委託契約であるが、発注元企業が請負契約や派遣契約との区別が理解できていない場合、直接指揮命令を受けたり業務の完遂を求められたりする可能性がある。
また、SES契約であっても実態が派遣契約と変わらないときは、偽装請負と類似の問題が生じる。
IT現場ではSESも派遣も請負も混在する場合が多くあります。
請負は成果物への責任が発生するため区別されますが、派遣とSESは発注者も違いがわからない場合も。
派遣社員はクライアント会社が直接指示できるため、それと同じようにSES社員にも指示を行っているケースが少なくありません。
もともとSES会社は派遣業の許可を得ていない会社が行っているため、このようなケースでは「偽装請負」という事で処分されてしまいます。
そのため、SESとして働いているシステムエンジニアは、その他の契約社員と比べても一層気をつけなければなりません。
SES契約で気をつけるべきことは?必ずチェックすべきケース
それではSESとして働く場合、どのようなことに気をつけなければならないのでしょうか。
上述の通りIT業界の現場では、様々な契約形態の社員が混在しています。
そのため、依頼元の社員であっても、正確にその作業員がどのような契約に基づいて作業を行っているのかわからないケースがあります。
- 「スケジュールが遅れているから」と残業や休日出勤をお願いされた。
- 「このようなシステムを作ってほしい」と直接指示を受けた。
- 「あなたが作ったプログラムにバグあった」と無償で修正を命じられた。
このようなことは全てSES契約の範囲外であり、最悪所属しているSES会社が処罰される可能性があります。
そのため、きちんと受けられない旨伝えましょう。
その際、依頼元の社員がSESの契約形態を理解していない可能性があるため、きちんと受けられない理由についても説明できるようにすることをおすすめします。
SESがおすすめな人はどんな人材なのか?
SESは常に人不足のIT業界の現場では必要不可欠な存在ですが、SESはどのような人におすすめなのでしょうか。
SESの特性として、「ひとつの現場に長く常駐できる」ということが挙げられます。
請負では案件ごとに依頼されるケースが多いですが、SESは期間を限定せずに依頼されます。
クライアント会社としても現場を知っている人に長くいてほしいと思うためです。
ひとつの現場に長く常駐し、運用保守を一手に引き受けていると、様々なスキルを習得することができます。
例えば、
- サーバやネットワーク
- データベースなどインフラ関連の技術
- 設計書を読み解く技術
- プログラムのコーディング技術
などのスキルは今後エンジニアとして活躍する際に非常に役に立つことでしょう。
このようにSESは「エンジニアとして腰をすえてスキル習得したい」と考えている方には非常におすすめできる契約形態といえます。
SES案件はフリーランズエンジニアが多いのが特徴
近年、フリーランスのエンジニアが増加傾向にあります。
インターネットの発展で、気軽に人材が欲しい企業と仕事がしたいフリーランスがつながるようになったことが理由として挙げられます。
SESの案件においてもフリーランスが採用されるようになっていることをご存じでしょうか。
フリーランスエンジニアはひとりで活動する機会が多く、一通りの作業がこなせる人材が多いためです。
現場でも安心して仕事を任せることができると、積極的に採用しております。
近年企業のシステムのIT化が進むようになり、構築案件よりも運用、保守案件の方が多くなってきました。
保守案件では案件ごとに区切られる請負契約よりも、期限を設けないSES契約がよく採用されます。
そのためSES案件は非常に多く、フリーランス側としても案件が選べる状態にあります。
フリーランスはスキル次第では高収入が得られる夢のある職業です。
ぜひSES案件でスキルを磨き、フリーランスとしてステップアップしましょう。
SESになるには転職エージェントに相談がベスト!
では、フリーランスがSES契約で働くためには、どうするのが近道なのでしょうか。
SESとして働く場合、転職エージェントに相談することをおすすめします。
クライアント会社としては質のよいエンジニアを欲しています。
転職エージェントは比較的質のよいエンジニアが集まる傾向にあります。
そのためクライアント企業のなかには、転職エージェントには一般に公開していない高単価な案件を依頼しているケースも。
SESとして働きたい方は、ぜひ転職エージェントに相談しましょう。
SESとは?派遣と請負の違いまとめ
SESはIT業界における契約形態の一種です。
類似した契約形態で派遣、請負がありますが、それぞれ明確な違いがあります。
派遣との違いは指揮命令権がどこにあるのか。
SES契約ではクライアント企業は直接業務指示、残業依頼などはできません。
派遣契約の場合は直接可能です。
請負との違いは納品物に責任があるのかと言う点です。
請負は納品物に対して報酬が支払われるため、納品物に不備があった場合瑕疵対応を行う必要があります。
SESではそのような責任がなく、時間単価で報酬が支払われます。
SESは責任範囲が狭いため請負契約に比べ単価が低い傾向にありますが、長く一つの現場で腰をすえて業務ができるため、スキルアップには最適な契約です。
転職エージェントでは高額な案件もあります。
フリーランスでスキルアップを目指している方は、ぜひ転職エージェントに相談し、SESとして働いてみましょう。
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